【入荷情報】稲吉善光さんの器
久々に器が入荷!しかもcopse初登場の作家さんです。
笠間で作陶されている稲吉善光(いなよし・よしみつ)さんの器が入荷しました。
土ものらしい作品に以前から注目していましたが、
実物を見てこれまで出会ったことのない質感や
力強い存在感に圧倒され、ぜひご紹介したい!とお願いした次第です。
「暑い時期は私の作る器はなかなか合いませんが、
それでも紹介していただけて心躍ります」と、
たくさんの作品に添えて、ご丁寧なお手紙もいただきました。
あっさりした食べ物が欲しくなるように、夏は磁器や染付など涼やかな器が似合います。
でも夏こそ、食材をそのまま生かした、ダイナミックな料理が似合う季節。
さっそく朝どりトマトときゅうりのサラダを盛りつけたり、
ズッキーニたっぷりのカレーにと使ってみましたが
おおらかかつ色鮮やかに受け止める稲吉さんの器が食卓の主役となりました。
代表作ともいえる鉄釉の作品は、表面に細かく入った貫入が特徴。
釉薬の下にかけている化粧土が細かくひび割れを起こすことで
独自の風合いをつくり出します。
墨手の器はグレーが陰影を醸して、こちらも落ち着いた風合いが格別です。
先日、笠間の工房におじゃましましたが、見渡す限り田んぼと
山の緑に囲まれた人里離れた場所で作陶されていました。
大きなガス窯のある工房もセルフビルド。
デスクの前の窓から常に緑を眺める気持ちの良いものづくりの場所に、
おだやかな暮らしの一端をみた思いをしました。
「だんだん技術がついてくると、ろくろをひくのも上手になるんだけど、
逆に味わいが失われ、つまらない器になると気づいたんです。
だから、あえて無骨に厚く重く挽いてみようと最近意識するようになりました」と稲吉さん。
ぜひ見ていただきたいのが高台。裏側の土台の部分です。
削ってきれいに仕上げることが多いですが、稲吉さんの器は
高台の裏側まで釉薬がしっかりまわって美しい景色を作り出しています。
茶碗の最高峰といわれる井戸茶碗は、高台のまわりにできる梅花皮(かいらぎ)と呼ばれる
釉薬の縮れが器の価値や表情を決める目安のひとつとされていますが
稲吉さんの器に出会い、簡素な美しさをたたえたところに
器本来の魅力があるのだと気付かされた気がします。
静かな光を放つ陰影に富んだ器を、どうか手にとって味わっていただければ幸いです。