仁城展まであと2日!
仁城義勝展がいよいよ12日からに迫りました。仁城さんから届いた作品をひたすら開梱。お盆だけでもこのバリエーション(写真右)!小さな器から大きな鉢もの、お重も四角いものから丸いものまで圧巻です。しかも、作業中の雑多な店内に仁城さんがわざわざご来店くださいました。昨日まで滞在されていた京都から到着された足でいらしてくださったとのこと。しかも冷たい雨のなか。明日は埼玉のギャラリーに在廊され、12日と13日はcopseに、そしてまた週末は京都だそう。還暦を超えた方とは思えない疲れ知らずの行動力!荷を解くたびに店のなかが赤く深い色に染まっていくようで、これまでにないまったりとした空気が流れ始めています。明日また速報をお伝えしたいと思います!
<仁城義勝展>
11月12日(木)〜21日(土)*会期中無休
仁城さん在店日/12日、13日
仁城さんインタビュー
来週12日〜から仁城義勝さんの個展がはじまります。仁城さんの漆は5年前のオープン当初より扱わせていただいていましたが個展は今回がはじめて。漆というとよそゆきの器、ハレの日のものと敬遠する方も多いようですが、仁城さんの漆は日常の道具。木のあたたかさと美しさに満ちています。会期に先立ち岡山の工房にうかがい、仁城さんのものづくりの背景をうかがってきました。長文ですが、ご一読いただけると幸いです。
copse(以下c)—-仁城さんの器は木を削るところから漆まですべて手がけていらっしゃるのが特徴ですね。しかも丸太から仕入れて‥‥倉庫に膨大に保管されているんですね。
仁城—修行した富山の工房が丸太から仕入れて乾燥させるところからしていたので、僕には当たり前のことだと思っています。ただ丸太で購入しても5〜6年寝かさないと使えません。もちろん乾燥の過程で割れたり反ったりすることもあれば、製材してみると虫食いや腐っているところが見つかることもあったりで、正直歩留まりが悪いです。製材所からすぐ使える材料を買ったほうがよほど効率はいいでしょう。でも、丸太からつくることに意味があるような気がしているんです。製材するたびに木の命をいただいているという気持ちになり、命へのいとおしみが湧いてきます。自分の命は100年にもなりませんが木の命はもっと長い。丸太を前にすると、人間のエゴやおごりに気づかされたり、教えられることがたくさんあります。
c—木を無駄にしないよう、木取りにも配慮されているんですよね。
仁—丸太は薄い素材と厚い材料に製材します。厚い材料で椀や鉢物を、薄い材料はお皿を挽きます。製材するときにできる端材は四角いお重にします。お椀が売れるからといってお椀ばかり作ると端材が取れなくなる。わざと端を残すことで木を無駄なくつかうことができるし、バランス良くいろんな作品をつくることにもつながっています。もともと30年前に生地屋としてスタートして、最後まで自分で作りたいと思って仕上げ(漆)まで手がけるようになりましたが、やはり木をいかに大切にするかという思いがあります。
c—材料はトチと栗の2種類を使われていますね。
仁—木はどうしても存在感が主張が強いのですが、トチは木目が控え目ななので気に入っています、木目が静かだから漆で仕上げたときも漆を喧嘩しないでお互いが主張しすぎることがない。一方、栗は力強い木目が魅力。トチだけでは物足りないときに栗を少し使う感じですね。使えるものを作りたいという思いがあるので、自分が主張するようなものづくりが苦手で、素材の持っているものを生かして誰にでも馴染む姿にしたいと常に思っています。
c—仁城さんの漆はシンプルですが木目が透けて見えて、それがひとつひとつの個性となっている気がします。
仁—手を加えすぎないようにして、完結する前の一歩引いた状態にして仕上げるようにしています。完結してしまうと料理を入れたときに器が勝ってしまう。逆にぼけてしまうと料理まで殺してしまう。あくまで主役は料理で器はそれを支える存在なんです。「つくることをつくらない」というか「つくるらないことをつくる」のが僕の目標なんです。繰り返しになりますが、主張をできるだけ消したい。僕が僕がという存在をつくりたくないし、そんな人生もまたつまらない。ただ凡々としているだけでいい、精神的なつながりが根っこにあればそれで十分ではないかと思っています。
c—つくられる器は定番の形が基本になって、後から同じものを買い足せるのも魅力です。
仁—自分で考えて形を生み出したというより、要望されたり、木の出会いから少しずつ増えてきましたが、定番のアイテムをつくるだけ。毎年新作を発表するようなこともなく極めて地味なものづくりです。器は使う人のもの。料理を盛り付けて初めて完成するものであってほしい。オブジェやアートとは違う、あくまで生活の道具を目指しています。じゃあ、ただの容器でいいかというと、それは違います。〝器〟という言葉は大器晩成とか、あの人は器が大きいとか、人と同義語として使うことがありますよね。機能だけではなくそこにに精神性が加わってはじめて器になるのではないかと。単なるものとして扱ったら精神性は失われてしまいます。これは使う人の問題ではなく、つくる者の問題。木のように個体として完結しているものを扱う場合はなお、そういう気持ちで向き合わなければならないと思っています。
c—これまでお椀やお皿など、アイテムの一部しかご紹介できてないので、今回は幅広い作品を見ていただく機会をいただけ本当に楽しみです。
仁—冬の間に荒取りや木取りをして、その後7月ごろまで木地づくり、夏は漆塗りをして秋は販売と、3ヶ月ごとにそれぞれの作業に集中します。一年のうちほとんどこもっていますが、秋はあちらこちらにおじゃまして、各地でみなさんにお会いするのが楽しみです。お店(copse)うかがうのは初めてですが、どうかよろしくお願い致します!
*仁城さんは12日と13日に在店くださいます。13日18時半〜仁城さんのお話会も予定しています(食事つき、¥2000+tax)。仁城さんからものづくりのお話しをうかがえる機会にぜひ、いらしてくださいませ。
*今週は通常営業。土曜までのランチはじゃがいもの煮っころがし/ブロッコリーの豆乳スープ/ピーマン丸焼きなど。来週のランチはお休みです。
仁城義勝展のお知らせ
行ったり来たりしながら、ゆっくり季節が移ろっています。11月も間近になりました。copseの誕生月となる11月、5周年を記念して、仁城義勝(にんじょう・よしかつ)さんの個展をさせていただきます。岡山県で漆の器をつくられている仁城さん。木を削る〝生地師〟と、漆を塗る〝塗師〟が分業することの多い世界で、仁城さんは丸太から仕入れ、乾燥させ、できるだけ無駄を出さないよう型取りして木を削り、漆を塗って仕上げるところまで一貫して制作されています。「木の命を引き継ぎたい」そんな思いから、漆は木を守るだけ最小限に塗るだけ。木目が透けて見えるのが特徴で、使うほどに光沢を放ちます。少しずつ買い足して使えるよう、定番の形を作り続けるていることも含め、長く使い続けて欲しいという思いを見事に作品に託されているところに惹かれます。copseの定番としてオープン時からご紹介してきましたが、個展ははじめて。これまで店頭でご紹介したことのないアイテムもたくさん見ていただける機会となります。また、13日(金)は仁城さんのお話し会を開催。ものづくりの思いをうかがいながら、漆の器を囲んでささやかな夕食会を催します。ぜひ、ご参加ください。
今週は常設展。今週のランチはさつまいもときのこの豆乳ドリア、トマトスープなど。寒くなりましたね。あたたまりにきてくださいね。
copse5周年記念 仁城義勝展
〜ふだんのうるし、ハレの日の漆〜
11月12日(木)〜11月21日(土)*会期中無休
*仁城さん在店日/12日、13日
<仁城義勝さんのお話し会>
11月13日(金)18時半〜 参加費/¥2000(食事代含む)
*ご参加ご希望の方は店頭もしくはcopse <info@copse.biz>までお申し込み願います。
【作家紹介】仁城義勝さん(漆)
岡山県井原市の山腹で漆を手がける仁城さん。漆というとよそゆきの器、ハレの日のものと思いがちですが、仁城さんの漆は日常の道具。木のあたたかさと美しさに満ちています。仁城さんの漆は木を守るだけ最小限に塗り仕上げています。「だからぼくのは漆というより、木の器なんです」と仁城さん。岡山の工房には木仁城さんのものづくりの背景をうかがってきました。長文ですが、ご一読いただけると幸いです。
(以下c)—-仁城さんの器は木を削るところから漆まですべて手がけていらっしゃるのが特徴ですね。しかも丸太から仕入れて‥‥倉庫に膨大に保管されているんですね。
仁城—修行した富山の工房が丸太から仕入れて乾燥させるところからしていたので、僕には当たり前のことだと思っています。ただ丸太で購入しても5〜6年寝かさないと使えません。もちろん乾燥の過程で割れたり反ったりすることもあれば、製材してみると虫食いや腐っているところが見つかることもあったりで、正直歩留まりが悪いです。製材所からすぐ使える材料を買ったほうがよほど効率はいいでしょう。でも、丸太からつくることに意味があるような気がしているんです。製材するたびに木の命をいただいているという気持ちになり、命へのいとおしみが湧いてきます。自分の命は100年にもなりませんが木の命はもっと長い。丸太を前にすると、人間のエゴやおごりに気づかされたり、教えられることがたくさんあります。
c—木を無駄にしないよう、木取りにも配慮されているんですよね。
仁—丸太は薄い素材と厚い材料に製材します。厚い材料で椀や鉢物を、薄い材料はお皿を挽きます。製材するときにできる端材は四角いお重にします。お椀が売れるからとお椀ばかり作ってしまうと端材が取れなくなる。わざと端を残すことで木を無駄なくつかうことができるし、バランス良くいろんな作品をつくることにもつながっています。もともと30年前に生地屋としてスタートして、最後まで自分で作りたいと思って仕上げ(漆)まで手がけるようになりましたが、つねに木をいかに無駄なく使うか、どうすれば大切に使い切れるかを考えています。
c—材料はトチと栗の2種類を使われていますね。
仁—木はどうしても存在感が主張が強いのですが、トチは木目が控え目ななので気に入っています、木目が静かだから漆で仕上げたときも漆と喧嘩せず、お互いが主張しすぎることがない。一方、栗は力強い木目が魅力。トチだけでは物足りないときに栗を少し使う感じですね。使えるものを作りたいという思いがあるので、自分が主張するようなものづくりが苦手で、素材の持っているものを生かして誰にでも馴染む姿にしたいと常に思っています。
c—仁城さんの漆はシンプルですが木目が透けて見えて、それがひとつひとつの個性となっている気がします。
仁—手を加えすぎないようにして、完結する前の一歩引いた状態にして仕上げるようにしています。完結してしまうと料理を入れたときに器が勝ってしまう。逆にぼけてしまうと料理まで殺してしまう。あくまで主役は料理で器はそれを支える存在なんです。「つくることをつくらない」というか「つくるらないことをつくる」のが僕の目標なんです。繰り返しになりますが、主張をできるだけ消したい。僕が僕がという存在をつくりたくないし、そんな人生もまたつまらない。ただ凡々としているだけでいい、精神的なつながりが根っこにあればそれで十分ではないかと思っています。
c—つくられる器は定番の形が基本になって、後から同じものを買い足せるのも魅力です。
仁—自分で考えて形を生み出したというより、要望されたり、木の出会いから少しずつ増えてきましたが、定番のアイテムをつくるだけ。毎年新作を発表するようなこともなく極めて地味なものづくりです。器は使う人のもの。料理を盛り付けて初めて完成するものであってほしい。オブジェやアートとは違う、あくまで生活の道具を目指しています。じゃあ、ただの容器でいいかというと、それは違います。〝器〟という言葉は大器晩成とか、あの人は器が大きいとか、人と同義語として使うことがありますよね。機能だけではなくそこにに精神性が加わってはじめて器になるのではないかと。単なるものとして扱ったら精神性は失われてしまいます。これは使う人の問題ではなく、つくる者の問題。木のように個体として完結しているものを扱う場合はなお、そういう気持ちで向き合わなければならないと思っています。
c—一年の間にサイクルを決めた制作スタイルも特徴ですね。
仁—冬の間に荒取りや木取りをして、その後6月ごろまで木地づくり、夏は漆塗りをして秋は販売と、3ヶ月ごとにそれぞれの作業に集中します。乾燥した時期に成形して、湿気の多い夏場に漆の仕事、そして冬は出稼ぎ(笑)で各地の展示会に立たせてもらう、と季節に合わせて作業を分割していますが、作業に集中できるし、出張のときもできるだけ何箇所もいけるように段取りしています。それぞれのお店に納品するのも年に一度。注文をうければいつでも発送できる問屋のようなことはできませんが、効率よくつくることで価格も抑えて喜ばれる器になるように思います。
c—仁城さんから作品が届くのは例年、秋の終わり。楽しみに到着をお待ちしています。
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【入荷情報】仁城義勝さんの漆器
SARAXJIJI+風亜展が無事に終了しました。着心地の良さに、今日も追加オーダーくださる方もいてありがたい限りです。
SARAXJIJIは、袖を通してその良さを実感できるブランド。
一見、目立たないけれども一度使うと手放せなくなる……そんな日常を豊かに変えてくれる力がSARAXJIJIの洋服にはあります。
ちょうど岡山から仁城義勝さんの漆器が届いて、通じる魅力を感じました。一般的に漆器は木を挽く木地師と漆を塗る塗師と分業でつくりますが、仁城さんは木を挽くところから漆を塗り仕上げるところまでひとりで行います。木を無駄なく使い、漆は3〜4回ほど最小限に塗るだけ。あくまで木の風合いを生かしたいという思うが、仁城さんの漆器には宿っています。いつも冬に木を挽き、夏にかけて漆を塗り、秋に各所に届けるというスタイルも変わらず。定番のものを中心に、10年後も同じものものを買い足し、買い替えられるものづくりをされています。これ以上ないほどシンプルですが、木目が透けてみる漆は、木の温かみを備えて使うほどに艶やかに変化します。今年は、栗の合鹿椀をお願いしました(写真右上/11000円+tax)。栃が定番ではありますが、力強い栗の木目にほれぼれとします。入れ子椀(写真左/22000円+tax)も、木を無駄なく使いたいと生まれた器のひとつ。開けたときも美しく、蓋に器にとフレキシブルに使えるデザインが秀逸です。欠品していた7寸と8寸皿も入荷しています。ぜひ一度、仁城さんの器を食卓に加えてみていただけると幸いです。
久々のスノウドロップのランチも再開。今週の週替わりごはんはシシカバブ風豚肉のりんごのせ、ターメリック大豆ご飯、きのこの豆乳ポタージューなど。土曜までぜひご賞味を!
仁城義勝さんの器
先日、岡山の仁城義勝さんから作品が到着しました。仁城さんは毎年1月〜2月に板から木型を取り、3月は粗挽き、4〜6月の乾燥した時期に木地を仕上げ、湿度の高い7〜9月に漆を塗り、1年近くかけて作品をつくりあげます。毎年決まったサイクルのもとに製作されるので、作品は一年に1度、前の年に注文した分だけいただけます。木地師と塗師が分業して作ることがことの多い漆の世界で、仁城さんのように木を挽くところから漆を塗るところまで一人で仕上げる方はとても珍しく、木目が透けて見えるの漆の風合いも特徴です。「一般的な溜め塗りの漆は、その上に装飾を施すためのもので、僕の漆は木を守るだけ最小限だから、漆が主役ではなく“木の器”なのだとおっしゃいます。それでも鈍く光る漆の光沢は美しく、ひとつずつ取り出すたびに艶やかな色合いに思わずため息がこぼれました。1年前、入れ子椀(2万3500円)をご注文いただいたお客様にも無事にお渡しできてほっとひと安心。この入れ子椀は托鉢のお坊さんの食器から発想を得たもので、一汁三菜の器として碗や皿、蓋となり、しかもひとつの器のなかに美しくしまえるといううスグレモノ。必要最小限に削ぎ落とされた道具としての魅力を感じます。漆を日常的に使うことに抵抗があると思う方も多いようですが、copseでは仁城さんのプレート(7寸皿6500円)に料理やお菓子を載せて使用しています。漆黒のなかに浮かび上がるように、食材を浮かび上がらせてくれるのが漆の魅力。みそ汁用から、丼用まで(6500円〜1万2000円)椀ものも少しずついただきました。おせちやお弁当用に活躍する丸いお重は2段で2万2000円です。
こうして一年に一度、仁城さんから作品が届くたび、店をはじめる前に新幹線とローカル線を乗り継いて、工房にうかがった日のことを思い出します。のどかな車窓の風景とは裏腹に、店をはじめる期待よりは不安に押しつぶされそうだった気持ちが、艶やかな漆の器とともによみがえります。その時、仁城さんがくださったお手紙は今でも宝物です。
「何かと大変なことも多々あると思いますが、くじけないでください。
使ってくださる方達の目線に立ち、心を尽くして人と人のつながりを思い、
日々の出会いを大切にすることで結果をいただけるのだと思います。
私にもしお手伝いさせていただけることがあればいつでも言ってやってください。
気を入れすぎないで、ゆっくりとやってゆけること心よりお祈りします」。
読み返すたびに涙がこぼれそうになりますが、そんな風にがんばってこれたでしょうか……あれから3年! 来月末にめでたく3周年を迎える予定です。この3年を支えてくださった言葉を、もう一度かみしめたくなります。
<11月〜12月のcopseカレンダー>