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2016.03.31木工

【作家紹介】加藤育子(木工)

加藤育子さんが制作されているのは静岡県藤枝市。
古い平屋の一軒家の納屋を改装して工房にしています。
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藤枝は焼津市や静岡市に隣接した内陸の街。
富士山を背景に北部は山々が連なっています。
加藤さんのご主人は藤枝の森林組合に所属する木こり。
山を守るため、木を伐採し森を再生するため植林するのが仕事です。
加藤さんは伐採された木が、そのまま使われることなく山に置かれる様子を見て
「伐られた木を使えるものにして山の命を引き継ぎたい」という
思いに駆られ、木工訓練校に通うことからはじめたそう。
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「樹齢700~1,000年の木を切る現場に立ち会ったとき、
年輪は細かく縮れ、古木は中心が空洞化し、力がかかった部分は
鈍い輝きを放っていました。誰にも作れない自然が作り出す美しさ。
でもキケンだからと伐られ捨てられるばかり。
自然に畏敬の念を持ちながら、きこりさん達の仕事に敬意を払い
木と向き合う仕事がしたいと思いました」。
そして加藤さんは伐採された木を生木のまま旋盤にかけ、プレートやボウルに仕上げます。
木工作品の多くは何年も乾燥させてから加工するのが通常。
生木のまま旋盤の機械にかけると、水分の多い樫は水しぶきが上がり、
桜からはピンク色の樹液がしたたり落ちるそうです。
山の命をいただく・・・山への感謝の気持ちが、
存在感にあふれた力強さを宿した作品を作り出すのです。
仕上げに使うのは、野生に近い状態で育てている日本ミツバチの蜜蝋。
養蜂まで手がけることで、山の恵みを丸ごと作品に託します。
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藤枝を訪れたとき、山に連れていただきました。
山肌を縫うように曲がりくねった道をいくつも走ると、
ぽっかりと目の前が広がる尾根に出ました。
急斜面に立つと遠く駿河湾まで見渡す、絶景が広がります。
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道路から離れたこんな現場では、伐り出された丸太を
みずから背負子(しょいこ)に背負って
細い山道を何往復もしながら運び出すのだそう。
想像するだけで大変な作業です。
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もうひとつ連れていただいたのは、山あいの小さな神社。
昔から集落の人々に守られてきたシンボルのような存在の
鎮守の森を伐るという仕事では、ヤマザクラをはじめ
樹齢を経た木々がたくさん伐り出されました。
地域で大切に守られた木が、新たな命を宿し、生活を彩り長く愛される器となる。
悠久の時を超えて今、こうして使うことのできる幸せを実感します。
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