【集いの食卓】阿部慎太朗さんの器
今回、初めてのご紹介となる阿部さん。若い女性に人気の作家さんのようで
連日阿部さんの器を求めてご来店くださる方がたくさんでした。
しかもみなさんキレイ系で身綺麗。キレイな人は美しいものが似合います〜。
「100年後のアンティークになる器」を目指し、丁寧なお仕事をされている阿部さん。
リムに装飾を施したプレートが人気で、どれにしようか悩む方続出でした。
オブジェ感のある花器やキャンドルホルダー、ボウルなど
インテリアの主役になれるアイテムもいろいろ。
このサイズのものを型でつくるのは難しく、複雑な造形は手間がかかると思いますが
手間を惜しまず、誰もしていないことにあえて挑戦するのが阿部さんの信条。
一見可愛らしい器ですが、熱い思いが込められているのです。
繊細な装飾のアイテムが人気ですが、大ぶりなレリーフ柄も素敵。
tottoさんの料理講座で料理を盛り合わせたときも、色とりどりの料理に負けない
存在感で料理を引き立ててくれました。オリーブグリーンを思わせる色合いもいいですね。
角型の深皿はこれからの季節、スープのおいしさをひきたててくれる存在。
フォルム感が抜群で、さまざまな料理に美しく映えそうです。
オーバルの器もテーブルのアクセントになってパーティに活躍。
シンプルな器好きには、少し可愛すぎるかなと気後れしがちですが
アンティークのものとも相性よく、少しプラスするだけでテーブルに彩りが加わります。
【集いの食卓】稲吉善光さんの器
集いの食卓展もいよいよ明日までとなりました。
笠間で作陶されている稲吉善光さんの器は今夏からと
ご紹介は最近ですが、これまでにない土ものらしいどっしりとした風合いが魅力。
今回の展示でも、新作を含めその魅力を余すことなくご紹介させていただいています。
稲吉さんといえば風合いに富んだ鉄釉が魅力。
先日、tottoさんが料理講座でサラダボウルにと選ばれた大鉢は、
色とりどりの食材を際立てて魅力を発揮。
欠品していた片口もお持ちくださいました。煮物や和え物にと
これからの季節に活躍すること間違いなしの逸品です。
新作の山砂釉のテクスチュアも素敵。ざらっとした質感と
光沢を放つ風合いが独特です。
重厚感漂う花器も格別。
どれも一見地味に見えますが、使うほどに良さを実感できる素晴らしい作品ばかり。
ぜひ手にとってご覧ください。
稲吉さんのOnline shopへ >>
【集いの食卓】安福由美子さんの器
「集いの食卓」展もいよいよ残すところわずかとなりました。
今回、はじめてのご紹介となる安福由美子さんの器、
照明から耐熱器、大きなオーバルから小皿まで、幅広い作品をご紹介しています。
なんといっても魅力は独特の質感。
釉薬に金属を加えて焼き上げた錆鉄を思わせるテクスチュアは、
使い方が気になりますが、どんな料理を盛り付けても
染みたり表情が変わらないよう目止め加工されています。
料理も美しく映えるだけでなく、こんな器が欲しかった!と思わせるフォルムやサイズ感が絶妙。
みずから作陶された器で、カフェを運営されていたという
貴重なご経験も作品づくりに大きく影響しているのでしょう。
和にも通じる丸菱形皿は、お正月にも活躍しそう。
楕円のプレートは大人数のときにお菓子や料理を盛り付けて
テーブルに置くだけで、思わず歓声があがりそうです。
金属を思わせる質感はガラスとの相性も抜群!
陰影のなかに見事なコントラストを描き出します。
花器も素敵で、ニュアンスのある花が似合います。
凛としたオーラをまといまがら、どんな器や食材も懐深く受け止める
おおらかで洗練された器にぜひ挑戦してみてください。
【集いの食卓】古来種野菜イベント
<11月20日(日)〜23日(水・祝)>
昨日の古来種野菜のワークショップのご報告。
講師はwarmerwarmerの高橋一也さんです。
高橋さんはもとは料理人。かのレストランキハチで活躍中に有機野菜に出会い、
その後、自然食品小売業や有機野菜ビジネスに関わり2011年に独立。
warmerwarmerをスタートさせます。
高橋さんが扱うのは在来種や古来種と呼ばれる昔ながらの土着の野菜。
一方、私たちが普段食べている野菜は、F1種と呼ばれる人工交配された種からつくられたもので、
流通しやすいよう形や収穫時期がほぼ決まった状態で収穫を約束されています。
そして種を収穫しても同じ野菜には育たないので、毎年種を買わなければなりません。
古来種は流通にしくく、効率が悪いため次第に栽培されなくなったものですが、
種をとればまた同じように花が咲き、同じように収穫できます。
このような昔ながらの野菜のなかには、京野菜をはじめ
各地にブランド野菜はありますが、高橋さんが扱うのは、それとも異なる
昔から地域の人が細々と育て種を取り、育ててきた野菜。
一般には流通されることのない絶滅寸前ともいえる品種が中心です。
起業されるきっかけとなったのがあの震災でした。
2011年3月、おつきあいのあった福島の農家が震災とのちの原発被害で
代々引き継いできた畑はもちろん、種を失いました。その補償をしてもらおうと
東電にかけあうも「たかが種。種なんて買えばすむもの」とあしらわれてしまう。
古来種野菜は種もほとんど流通しておらず、種を失うということは
その野菜を二度と作れないということ。脈々と引き継がれてきた種を失う悔しさ、
喪失感は、種を大切に守ってきた人にとっては測り知れないほど深いのに、
種のことを知らない人にはまったく、理解されないものだったのです。
そして「種を守るために、古来種のおいしさを知ってもらわなければ」と
高橋さんはwarmerwarmerを始めたのです。
なにより、昔から土地の風や土、水に育まれてきた野菜には
本来の力強い香りや個性的な形、おいしさが備わっています。
ワークショップではお話しをしながら、高橋さんみずから切ったり
焼いたりと調理してくださった野菜を、そのまま試食!
料理教室さながらの素早い手つきで
次々に野菜を調理してくださるのは、さすが元料理人!
なにより、それぞれの野菜のおいしかったこと!
「忙しい人にこそ古来種野菜を食べて欲しいんです。
シンプルな調理法で十分おいしくいただける。味付けがシンプルでいいから
余計な調味料も不要で、キッチンもシンプルになっていいですよ」と高橋さん。
古来種はおいしい!という熱い思いで生産者と消費者をつなぐ役割を
果たす高橋さんのお話しには興味深い言葉がちりばめられていました。
たとえば会社を立ち上げる際、誰もが反対するなか
「社会はこうしたいと思う人がつくっていいんだよ。
社会の枠にとらわれずに自分が思うことをやってみたらいい」と
背中を押してくれた人がいたこと。
本来、自然と人をつなげるものが〝農〟。
それが産業化して〝農業〟となってしまった。
産業化した野菜(F1種)は商品になってしまい、
自然から生まれた〝食べもの〟という意味から離れてしまった。
古来種が、流通や効率優先の社会のなかで淘汰されたように
人間の社会も同じことが起こっている。
生産性でしか評価できない社会に未来はあるのだろうか、、、など
熱い思いに突き動かされた人の言葉は、こんなにも心に響き、
社会や人を少しずつ変える力があると気付かされました。
今週にははじめての著書『古来種野菜を食べてください』が発売されるそうです→⭐︎
野菜の販売は23日まで。
ぜひ個性豊かな力強い野菜を味わってみてください。
【作家紹介】阿部慎太朗さん(陶)
ヨーロッパのアンティークを思わせる器たち。
優美な彫り模様が女性らしい雰囲気を漂わせますが、
この作品をつくるのが若干31歳 の若き陶芸家、阿部慎太朗さんです。
阿部さんは香川県出身。東京の大学に入学後、陶芸サークルに勧誘されたのが
きっかけで陶芸をはじめます。サークル活動にのめり込み大学には7年通われたそう。笑
卒業後は釉薬の知識を深めるために笠間にある
茨城県工業技術センター窯業指導所の釉薬科で学びます。
なんと在学時代から少しずつオファーが入るようになり、卒業後はそのまま独立、
作家としての道を歩み始めます。
今や阿部さんの代表作となっている装飾的な器をつくるようになったのは、
骨董市で見つけたヨーロッパのアンティークの器との出会いがきっかけでした。
時代を超えて美しく佇む姿に魅了され
「現代の生活に合うのはもちろん、100年後にアンティークになる器をつくりたい」と
鋳込みと呼ばれる石膏型を使った手法で制作をはじめます。
リムには彫刻刀で丁寧に模様を彫り、焼きあがったとき
凹凸感のある彫り模様に、釉薬が美しい濃淡を描き出すのが特徴。
笠間の工房にうかがったときの、膨大な型のストックや、
彫刻の作業をする窓辺に置かれた道具の美しい佇まいが印象的でした。
「悩んだときは手間のかかる方法を選ぶようにしています。
誰もやらないことや、難しいことに挑戦したほうが
結果的にいいものができる気がします」と阿部さん。
仕事量やスピードを求められるようになった今もコツコツと、手間がかかる部分は
ときに人の手も借りながら、決して手を抜くことなくつくられる美しい器。
若くしてみずからの作風を確立された人の言葉が、心に強く響きます。
素敵な器があるだけで、ちょっとがんばって料理を作ろうかなと思うもの。
テーブルを華やかにいつもと違う気分で盛り上げてくれる、とっておきの器です。
2016年「集いの食卓」展でのご紹介はこちら→⚫︎
【作家紹介】安福由美子さん(陶)
いよいよ17日(木)から「集いの食卓」がはじまります。
企画展にさきがけ、先日大阪・堺で行われたクラフトフェア「灯しびとの集い」に
参加された安福さんに会いにうかがいました。
錆鉄を思わせる器や、フォルムが際立つ造形、マットな耐熱鍋など美しい器を前に
丹念に選ぶ来場者で安福さんのブースは人だかりが絶えず、常に賑わっていました。
はじめて安福さんがクラフトフェアに参加したのはちょうど1年前の「灯しびとの集い」。
それまでほとんど地元のギャラリーや知人からのオーダーなど
お住いの岐阜を中心に活動をされていました。
現在にいたる安福さんの経歴はちょっとユニークです。
デコレーターとして活躍された後、
趣味ではじめた陶芸をさらに追求するため、
30代で京都造形芸術大学に入学。
卒業後は作陶を続けながら、岐阜駅近くにカフェをオープンされます。
器はもちろん、ランチやケーキもすべて安福さんの手によるもの。
アンティークの家具を配した心地よい雰囲気も手伝って
人気を集める一方で、お客さんを中心に、器の注文を受ける機会が増えます。
その数がどんどん増えるにつれ、一人で切り盛りしていた
カフェと作陶の両立が難しくなり、惜しまれながらも2013年にクローズ。
作陶一本の生活にシフトしたのを機に、もう少したくさんの方に見てもらいたいと
応募した大阪・堺のクラフトフェア「灯しび人のつどい」に2015年に初参加。
今年はクラフト作家の登竜門「松本クラフトフェア」にも参加されました。
思うままに人生を切り開かれた経歴を聞くと
なんだかエネルギーに満ちあふれたパワフルな女性をイメージしますが
ご本人はむしろやわらかな物腰の上品なお方。
早くも全国のお店からオファーが続いているようですが、
あくまで好きなことを求められるままに追求した結果、
陶芸家と呼ばれることに、ためらいすら感じている風です。
花器や耐熱、照明、オブジェなど幅広い作品に積極的に取り組まれているのも
幅広いお仕事に関わってこられた自然な発想なのでしょう。
安福さんの工房兼ご自宅におじゃましたときに、
その漠然とした印象が確信に変わりました。
木をふんだんに使ったシンプルモダンな住まいは丁寧に手入れされ、
レザー張りのソファとともに、年月を経て美しく光沢を放っていました。
住まいの片隅にレイアウトされた工房は
シンボルツリーが枝を広げる庭とリビングを眺める住まいの特等席。
キッチンからすぐアクセスできる場所にレイアウトされ
料理をつくるように、生活の一部として
器をつくられることを楽しんでいらっしゃるのだと思いました。
そして厚かましくいただいたお昼ご飯のおいしかったこと。
モノトーンの洋服をシックに着こなすお姿と同様、
料理や器、そして空間といった暮らしのすべてが調和を保つ様子に、
ただただ圧倒されました。年齢や経験を経てこそ漂う上質さ。
自らの感性に従い、貫かれてきたこれまでの道のりを垣間見た気がしました。
安福さんの作品のなかでも錆び鉄の作品は代表作のひとつ。
たおやかでストイック。そんな安福さんの作品をぜひ手に触れて
感じていただけると幸いです。